子どもの虐待防止ネットワーク鳥取(CAPTA) 理事長 安田壽朗
命を奪わないで! 人間の尊厳を侵さないで!
「人の世に熱あれ、人間に光あれ! (100年記念を迎えた水平社宣言より)」
私たちは、今、遠くウクライナの戦火で命を奪われ、傷つき、家族や住む家を奪われ、冬空をさまようウクライナの子ども達を目の当たりにしています。全世界に未曾有の被害をもたらした第二次世界大戦、そしてその後、世界で果断無く繰り広げられてきた戦禍と同様、ウクライナの子ども達を襲った惨劇は、想像を遙かに超え、私たちの心を切り裂き悲しみと怒りにあふれさせます。
日本を顧みれば、2年余に続く新型コロナウィルス感染症の猛威の前に格差は広がり、困難を抱えている家族は社会から取り残され、崩壊し、おおくの児童虐待を生み出しています。昨年9月に岡山市で発生した当時5歳の西田真愛さんが、母とその交際相手によって、椅子のうえに置いた鍋の中に明け方まで長時間裸で立たせたうえに布団で巻いて放置させられるなどという筆舌に尽くしがたい虐待を受け続け死に至ったのは、その氷山の一角として私たちの記憶に深く刻まれました。
何時の時代でも、社会のひずみによって犠牲になるのは、社会的弱者、とり分け子ども達です。国連子どもの権利条約が成立して32年、我が国が批准してから28年。条約が求める子どもの命が奪われず、守られ、成長することが保障される世界はますます遠のいているように思えます。
しかし、子どもの社会参画を促し、大人によってつくられたこの社会のひずみを克服するものとして期待された国連子どもの権利条約第12条の意見表明権は、遅々とした歩とは言え、気候変動に立ち上がったグレタ・トゥーンベリさんなどの活動によって日の目をみつつあります。そしてまた、子どもの権利擁護においては、アドボカシー(子どもの代理人)制度などの世界的広がりによってようやくその端緒を見いだしつつあります。 このような、子どもを巡る状況において、私たち子どもの虐待防止ネットワーク鳥取は、以下の緊急アピールを行います。
1 ウクライナの子どもたちのこと
ウクライナの子ども達の悲惨を私たちは許すことができません。ウクライナの子ども達の命と生活を守るために、即時停戦と、国連子どもの権利条約の精神にしたがい、子ども達の最善の利益に基づいた平和構築を求めます。また、これらの目的を果たすために、できうる限りの行動をとることをすべての人々に呼びかけ、私たちはその一翼を担うことを決意します。

2 子どもの虐待の防止と対応のこと
これまでの活動に増して、子どもへの虐待を生み出す状況の改善を目指します。とりわけ、児童相談所、市町村、家庭裁判所が関与しながら、子どもが虐待によって死に至るような現状の克服に全力を尽くします。そのために、すべての方々へ、私たちのネットワークへの参加と連帯をもとめます。

3 子どもの意見表明のこと
子どもの意見表明権の大きな足かがりとして鳥取県が計画している子どもアドボカシー制度が子どもの権利状況を大きく前進させるものとして、支持し協力します。国連子どもの権利条約の意見表明権に沿って、鳥取県版アドボカシー制度が、子どもの意見も取り入れて制度設計され、権利基盤型でより実効的にものとなるよう全力を尽くします。
以 上
